トップページ > ヨナミネREPORT > ドラゴノーツ隊インタビュー
「孵化したドラゴンは、そもそもタナトスへの導き手である私たちオリジナルドラゴンを優先的に守る本能があるようだ。その中でもギオは、特に強く他のドラゴンに呼応するようだな。私とオストルムの戦いに感応して、自力でタルタロスに張ってあったCSSを打ち破ったこともある」
「じゃあ、ジンとギオが廃棄層に落ちたあの瞬間に、ノザキ教授がアクチュアライズしなかったら、今頃は……」
「そういうことだ。しかし、その力にタナトスが目をつけなければいいんだが……」
「タナトスが? どういうことですか、教授?」
「私たちにはタナトスから分離する前の記憶はないので、実体験としての発言ではないのだが……、タナトスというモノは、一個体ではないのだよ。すべての精神をネットワーク化して、それぞれの個体をニューロンとして思考するメタブレイン……!!」
「『集合知性体』とでも言われるのですか!? まさか……!!」
「とはいっても、すべての知性が同格ではなく、多くの思考を取りまとめるためには竜骨に当たる精神がひとつ必要だ。そして、それは時に更新されねば全体が硬直してしまう。今のところタナトスはそれを必要としていないようだが、タナトスの考えは我々ではうかがい知れないからな……」
「………………」
「どうしたんだ、ギオ?」
「いや……、何でもない……」
「そうか、それならば構わないが……おっと、そろそろ時間だな。では、次の組に移るとしよう」
「さて、ここからはドラゴノーツ隊の皆さんの出番だ。かつてのヒーローも、今や古巣から追われる立場になってしまったわけだが」
「来て早々そんな嫌味を聞かされるわけ? あんた、私たちの味方じゃなかったの!?」
「おっと、これは失礼。口の悪いのは生まれつきでね……。まあ、まずは隊長さんから話を聞いていこうか」
「僕たちの立場をはっきりさせるとすれば、かつても今も人類を守るために戦っている、そこに違いはないよ。だが、守るのは人類だけじゃない。地球に生まれた、このドラゴンたちも守る。それだけのことさ」
「ライナ……! お前ってやつぁ……!! 俺は感動したぞぉ!!」
「そこの暑苦しいのは置いといて、ライナ、ISDAが方針転換を発表した後、あんたらがドラゴンに乗って基地を脱走した時の事件。あれが『ドラゴノーツ反逆! 基地を破壊して脱走! 地球は火星の二の舞か!?』って大きく報道されたのは覚えているな?」
「ああ、もちろん。僕たちにとっては甚だ心外な話で、あまり思い出したくないことだが」
「それから一年の間、よく捕まらなかったもんだが、どうしてたんだい?」
「僕とハウリングスターは、ドラゴノーツを信じてくれていた活動家の皆さんのところにしばらく匿われていたんだ」
「活動家ねえ……。あれって、お前のファンクラブの本部だろ? さっき感動して損したって、ちょっと思ったぞ!?」
「ふっ……。だけど、彼女たちにいつまでも迷惑をかけるわけにもいかなかったからね。さすがに出て行くことにしたんだ」
「アジトを替える時に、盛大に見送られちまったよなあ」
「それで発見されたってか……。同情するやら呆れるやら、だな」
「世間的には声を大きくできないだろうが、彼女たちは今も僕を信じてくれているはずだ。僕はその期待にこたえなければいけないのさ」
「おーおー。流石二枚目は言うことが違うね。これ以上自慢話を聞かされるのもたまらんから、次はお嬢ちゃんの番だな」
「まったく、いつまで待たせるのよ? ていうか、誰がお嬢ちゃんよ!? レディは正しく扱いなさいよね! これだから日本の男はちっちゃいっていうのよ!」
「まぁまぁ、お嬢様……」
「ISDAは出資元の関係者である君も容赦なく追跡してたな?」
「バウムガルド家は、身内だからって意味もなくかばい立てたりはしないわ。だからこそ名家でいられるのよ。逃亡中は実家にも連絡を取るわけにもいかなかったし、事情を把握してないお父様は、表だって私をかばう事は出来なかったのよ」
「厳しい家庭だな。庶民の俺には想像もできない世界か……。だが、もうその件は解決したんだろう?」
「あなたが連絡役をしてくれたからね。それについてはお礼を言っておくわ」
「しかし、一年は逃げ切れてたのに、なぜ発見された?」
「そ、それは……」
「私が……、この私めが茶葉を切らしてしまいさえしなければ……!!」
「おい、爺さん! 大丈夫か、急に興奮して……って、茶葉ぁ?」
「私とお嬢様はスイスの山荘に隠れて期を窺っていたのですが、お嬢様がお好きな紅茶の茶葉を買いに出た際に、不覚にも私が見つかってしまったのです」
「だから、紅茶がなければコーヒーでもいいってあれほど言ってあったのに……」
「いいえ! 長く不自由な潜伏生活、執事としてお嬢様に無為なストレスをおかけになるわけには参りません! それなのに、私と、私としたことが……。申し訳ありません、お嬢様ああ!! こうなれば、この皺腹かっさばいてお詫びを……」
「も、もういいってば、アマデウス……。執事から家老にキャラが変わってるし! 泣かないでよ、ねえ……」
「ま、まあ、生き延びたんだから結果オーライってことで、なあ? ところでハバラギさん、あんたたちはどうしてたんだ?」
「はぁ!?」
「偽名を使って、双子の歌手ユニットとしてデビューしていたんですの。意外と気づかれないものですわ」
「アイドルの経歴が秘密なのは珍しくないですから」
「ま、マジなのか?」
「そこまで手を込んだことをしていて、どうして見つかったんだ?」
「イツキが、どうしてもお墓参りを、と……。そこでエクスフォードフォースに待ち伏せされましたの」
「なるほど。気持ちはわかるが、迂闊ではあったかもな……。あー、そういえば、ちょっと前に何とかいうアイドルユニットが突如失踪したって、芸能ニュースで見た覚えがあるな……。あれはあんたたちだったのか?」
「アイドルにプライベートな質問はNGですわよ?」
「なりきってんじゃねーか……。じゃあ、インタビューの締め括りに、全世界の人々に向けて一言もらおうか」
「ドラゴノーツは、すべての人々を守る。ドラゴンとともにね。それが僕たちの真実だ」
「おう! この目が嘘をついてるように見えるか、なぁ!?」
「私は何があっても諦めないわ。かつては嫌いだったバウムガルド家だけど、今はその名を汚さないように努力したいと思う。バウムガルドの名にかけて、世界のすべてが敵に回っても、私の正義を貫くわ」
「おぉ、お嬢様! このアマデウス、最後までお供いたしますぞ!!」
「私たちドラゴンも、地球を故郷としたいのです。よしなに……」