トップページ > ヨナミネREPORT > ドラゴノーツ隊インタビュー
ヨナミネ・コウだ。前回のレポート更新からだいぶ時間が空いてしまったことを、本当に申し訳なく思っている。その間、私に何か重大な危険が及んでいたわけでも、ましてや更新をサボっていたなどということはない(多少の危険は日常茶飯事だが……)。
第20回のレポートで少し触れたとおり、私は独自にドラゴノーツの隊員、そしてドラゴンたちと接触し、ヒアリングを行ってきた。今や地球の敵として追われる立場となったドラゴノーツだが、それはあくまでISDA側の主張に過ぎない。今回お届けする彼ら自身の声を通じて、彼らが決して危険分子などではないことを理解していただければ幸いだ。
「さて、まずはジン、トア。君たちから話を聞こうか。なにしろ君たち自身が、この騒動の発端になったと言ってもいいくらいだからな」
「そんな……? 俺はただ、トアを追いかけていただけで……。それはあんたも知っていることじゃないか!?」
「まあ、まあ。何もお前さんらを責め立てようってわけじゃないんだ。ただ、ありのままの真実を話してくれればいい。それだけだ。……しかし、女一人追っかけるだけでこの騒ぎってのも、才能かもしれんな?」
「うむ。ジンには人を振り回す才能がある。おかげで俺も大変だった」
「ギオ! お前までそんな……」
「ジン、気を落とさないで! 私はここにいるわ!」
「トアっ!!」
「……あー、コホン。で、事の発端はISDA029便とドラゴン先遣隊3体との衝突事故だったわけだが、その件については未だにISDAは真実を公表していない。残念ながら俺も詳細までは知らん。それをここで明らかにしておこうと思うんだが」
「父さんの……」
「そうだ。君の父上が“犯人”に仕立て上げられた、あの事故だ。ISDAも適当にでっちあげればいいものを、原因不明のままにしたもんだから、マスコミによる捏造の火の粉がカミシナ機長にもろにかかっちまった。あの件については、俺の手も届かなくてな……。すまなかったと思っている」
「いえ……。もう過ぎたことですから……」
「ごめんなさい……」
「トア、君も気にしないで……」
「いいえ、ジン。私の話を聞いて」
「では、トア。君もつらいだろうが、我々に事故の真相を教えてくれ」
「私たちがこの星に放たれた時、タナトスも私たちも、ここに人類がいるなんて知りませんでした。シャトルの爆発の瞬間まで私たちは冬眠状態で――ジンとレゾナンスして私は覚醒したけど、ノザキ教授とローラは軌道を狂わせて、そのまま墜落してしまった……」
「それでノザキ教授も、ローラも、発見された時に傷ついていたってわけか」
「私は咄嗟にジンを助けることは出来たけれど、それが精いっぱい。自分に何が起きたのかも、この星に降りてどうしたらいいのかもわからなくて、衝突での傷が治った後は、ずっとジンを探していました」
「その時にはもう……、コミュニケーターといったか? 今の人間の姿をしていたのか?」
「はい。人間の言葉も、レゾナンスの瞬間に覚えました」
「そいつは便利だな。だが、ジンを見つけるまでの間に、人類にドラゴンのことを説明しなかったのは何故だ? 君自身に人類に対する認識がなかったから?」
「そうです。ドラゴンには“社会”というものがないの。特定の個体集団が全体に影響力を持つなんて、まったく考えられなくて……。だから、誰に説明したらいいのか、そもそも説明することで理解してもらえるのかもわかりませんでした」
「なるほどね。それなら、あんなに迷走していたのも仕方がないか」
「そして私は、ISDAが卵から孵化させたドラゴンを使役しているのを知って、人類に不信感を持ちました。ISDAが私を探しているのにも気づきましたし、だから余計に人類から遠ざかってしまって……。今となっては謝っても遅いことですけど……ごめんなさい……」
「トア、顔を上げて。考え方も何もわからない異星人の中に、いきなり放り出されたんだ。混乱するのは当然さ。トアはひとつも悪くないよ!」
「ジン……」
「トア……」
「ジン……!」
「トア……!!」
「……おいおい、お二人さん! 見つめ合って二人の世界に入らんでくれ。
一応、この会話は記録中なんだが……」
一応、この会話は記録中なんだが……」
「いちいち気にするな。トアとジンはいつもこうだ」
「『気にするな』って……。ギオ、お前まさか、1年間もずっとこの調子で、こいつらに付き合ってたのか!?」
「む? そうだが、何か変か?」
「い、いや……。変というか、変じゃないというか……。まあ、若いってのはいいことだな。ハハハ……」
「それより、ドラゴンのことを知りたいのではなかったのか?」
「そうだった。つい二人に釣られて本来の目的を見失うことだった……。では、ギオ。ここからはお前さんに聞こう。火星の一件の後、どうやってお前たちは地球に戻ってきた? こっちはこれでも必死で探して、骨を折ったんだぜ?」
「と、聞かれてもな……。気がついたらジンもトアもいなかったし、周りは燃えているし、よくわからなかったので飛んで帰ってきたのだが」
「そ、それだけか……?」
「他にどう答えればいいんだ? 俺たちにとっては火星なんか目と鼻の先だ。『どうやって戻った?』と聞かれるほどの大袈裟な話じゃない。だが、ひとつだけ気になることはあるな……」
「何だ?」
「後から話で聞いたことだが、俺は3日ほど暴走していたらしいな」
「そうだよ、ギオ! 俺もトアも心配してたんだぜ! そのくせ、まるで何事もなかったかのようにひょっこり戻ってきて『何があったんだ?』なんて言いやがって!」
ギオ「かすかに覚えているのは、俺が生まれた時と似たような感覚があったことだな。体が勝手に、トアを守ろうとして……」
「……守ろうとして!?」
「その後は覚えていない」
「ないのかよ!? つまりそれは、親を守る本能のようなもの、ということか?」
「知らん」
「『知らん』ってなあ~?」
「フッ、ギオにはそれ以上の説明は無理だな。代わりに私がお答えしよう」
「ノザキ教授!?」