vol.19 ISDA秘密基地から決死の潜入レポート!
さて、前回のレポートにて本名も正体も明かしてしまった以上、もう雑誌記者の振りをして堅苦しい文章を書く必要などなくなったわけだ。であれば、これからは包み隠さずに私の“仕事”の様子を書き綴ることも可能ではないか!
……などということを思い立った私は今、日本国内の某所にある施設から、この原稿をリアルタイムで送信している。これより開始するミッションは、ISDAの造船所への侵入。ISDAの備品の多くを作っている施設であるここは、存在自体が秘密なこともあって、外部には人間のガードマンを立たせてない。そこで堂々と建物の入り口に近づいた私は、キーカードを差し込み開錠する。どうやら、ISDA職員としての私の認証コードはまだ生きているようだ。相変わらず、呆れるほどにISDAのセキュリティ意識は低い。しかし、そのおかげでこうして呑気にモバイルでテキストを打ちながらの侵入が出来てしまうのだから、助かったというべきであろう。用心のためセキュリティランクのみを偽装し、ゲートを開いて内部へと足を踏み出していく。
ちなみに、ここではドラゴンの「コントロールギア」と呼ばれる装備も生産されている。これはドラゴンにドラゴノーツ隊員が搭乗する際のコックピットに相当するものであり、ある程度の航行能力を備えた生命維持装置であると共に、ドラゴノーツの意思をドラゴンに伝えるためのツール――いわば、馬の手綱のようなものだ。もちろんドラゴンも自由意思を持つ生き物であるので、必ずしもドラゴノーツの指示通りにだけ動く必要はないのだが、ドラゴンがドラゴノーツに従うという前提の元に絆が結ばれて……。
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おっと、失礼した。実は今しがた内部の警備員に見つかってしまい、それを眠らせるのに少々手間どってしまった。やはり片手間にテキストを打ちながらだと誰にも見つからず、というわけにはいかなかったようだ。何事も油断大敵ということか。
この建物は工場ではあるが、生産ラインはロボットによるものなので、内部で働く人間は警備員しかいない。その警備員も生粋軍人のジルアード警備員では無く、現在はISDAの職員が務めている。1年前からジルアードのISDAに対する警備は縮小されていることを知ってはいたが、こうして身をもって恩恵(?)を受ける日が来るとは流石に想像していなかった。
そうこうしているうちに、作業場に到着。生産ライン上には、ロールアウトを待つばかりの備品がずらりと並んでいる。私は手早くいくつかのコンテナを潜水艇に積み込み、そのまま潜水艇に乗りこむ。この潜水艇は深海で発見された地球産の「ドラゴンの卵」を回収するためにISDAが設計したもので、基本設計自体は20年前のものながら堅実な完成度を誇り、今日でも十分に通用する性能だ。
しまった! 警報が鳴り出した!!
どうやら私の進入が発覚したらしい!? 大量の足音が迫ってきている!
こうなるともう、余裕を見せている場合ではないな……。なりふりかまわず、さっさとここからオサラバすることにする。
では、命があったらまた次回お目にかかろう!!