vol.18 あれから一年、今明かす本誌記者の正体……
時の経つのは早いものだ。前回のレポートを最後に更新が途絶えて以来、一年もの月日が流れてしまった。しかも、前回はテキストの送信時にエラーがあったのか、中途半端な終わり方をしてしまっていた。それからずっと梨のつぶてだったものだから、読者諸氏の中には私の生死について不安に感じられていた方も、ひょっとしたらいてくれただろう。ご安心いただきたい。私はこの通り、無事に生きている。既にこの記事を受信してくれている人がどれだけいるかはわからないが、今後も発信を続けていくつもりだ。
さてこの一年を振り返ってみると、一体のドラゴンが火星を焦土と化し、それが地球中から観測された事実を受け、ドラゴノーツへの風評が180度変わってしまった。ドラゴンを使役して地球を守るヒーローだったはずの彼らが、今や恐るべき力を秘めた悪魔の如き扱いを受けている。この記事を読まれている方の中にも、未知の宇宙生物・ドラゴンの恐るべき能力を危惧している方が少なくないだろう。
そういった世論を察知してなのか、ISDAはドラゴノーツ部隊の解体に踏み切った。そして、それに反発したドラゴノーツの隊員たちがパートナーたるドラゴンを伴い逃亡したというのは、ISDAが発表した通りである。さらにISDAはドラゴン捕獲部隊「エクスフォードフォース」を設立し、逃亡したドラゴンの捕獲とドラゴン種の危険の封殺に尽力を上げることと、そのための技術を所持していることを公表した。
今や地球全土に広がる反ドラゴノーツの気運。まさに現代の魔女狩りと呼ぶべき状況だが、今一度よく考えてほしい! 我々が敵とみなすドラゴンの親玉たる存在——直径1000kmにも及ぶ宇宙生物が、未だ天空に在ることを。
この20年の間、確かにタナトスは沈黙を守っている。それ故に危機感も薄れ、世間一般では「タナトスはもう地球へは来ないのではないか」との楽観論が支配している。
だが、私はここで断言する。タナトスは、確かに生きている! 生き続けたまま、断続的に地球への間接的アプローチを行っているのだ。それでもなお、ISDAは未だタナトスに対する確実な攻撃手段を持ってはいない。唯一、タナトスを排除できる可能性は、ドラゴノーツにしかないのだ。
なぜ私がそんなことを断定できるのか? なぜそこまでドラゴノーツの肩を持つのか? そして、なぜ今まで機密情報を継続的に入手できたのか?
……いつまでも勿体ぶらずに、私の正体を明かそう。私は、雑誌記者ではない。
私の名はヨナミネ・コウ。一年前までISDAの特務調査員になりすまし、潜入調査を行っていた国際連合宇宙開発監視機構の監査官である。
その私の目が捉えた真実はひとつ。ドラゴノーツたちはタナトスの脅威に対して、地球のすべてを背負い、戦うつもりである。この一年間、地球の人々に怯えられ、虐げられ、追われても、尚だ。
私は彼らに最後まで同行し、人類が初めて接触した外宇宙知性体「ドラゴン」と共に歩む彼らがどういう結末を迎えるのか、見届け、伝えたいと思う。
もはや、ここでの情報公開は興味本位の戯れではない。人類へ真実を伝え、地球を死守する手段である。どうか、この記事を見ている賢明なる人たちよ、ドラゴノーツ、そして地球のドラゴンの真実を知ってほしい。私は彼らのために、そして貴方たちのために、ここから全世界へ情報を発信し続けていく!