vol.15 地球を守るのはISDAか? ジルアードか?
ここ数回に渡ってお届けしている小笠原におけるドラゴン災害は、我々人類に大きな疑問を抱かせることとなった。すなわち、現実の脅威となったタナトスから、誰がこの地球を守れるのか? ということだ。
そもそも対タナトス対策を進めていたはずのISDAが、新型ドラゴンの前にまったく無力だった。ご自慢の地球産ドラゴンとやらも、次々と撃墜されていく有様で、雌雄を決したType-X弾も、元々開発に成功したのはジルアード軍だったという。いわば、ISDAの独力ではこの事態を打開できなかったということであり、その存在意義を問う声は日ごとに高まっている。その上、ISDA本部ビルまで倒壊してしまったのだ。今後のISDAの働きに対しては、期待しろというほうが無理なのかもしれない。
一方のジルアード軍であるが、こちらは正真正銘の軍隊であるだけに、単純な戦闘力でいってもISDAとは比較にならないだろう。小笠原の一件においても、ジルアード軍は出動しておらず、もし間に合っていればここまで被害が拡大しなかったのではとの声もある。対ドラゴン戦闘での実績は未知数なものの、地球防衛の要としてジルアード待望論が巻き起こっているような世間の空気にもなっている。余談ではあるが、これまでアイドル的な人気を誇っていたドラゴノーツ隊のライナ・クロムウェルから乗り換えて、ジルアード国のアーシム王子のファンになる女性もいるとかいないとか……。
しかし、そのアーシム王子こそが曲者であり、本紙としてもジルアード軍に全幅の信頼を寄せられない原因となっている。月航路上でドラゴノーツ隊とジルアード軍が交戦したという未確認情報もあった中で、今回もジルアード軍がISDAの応援要請をあえて無視したという見方もある。それに、表向きはジルアード軍を動かす最終権限は国王にあるとされているが、実質は王子が指導権を握っている。いろいろと黒い噂が耐えない王子だけに、今後の動向にも予断を許さない状況だ。
真に地球の未来を託すのにふさわしい存在はISDAか? それともジルアード軍か? いずれにせよ、両者が対立している隙にタナトスが地球を制圧——などという冗談にもならない結末だけは避けてほしいものである。