vol.11 タナトスの異変と宇宙ステーションの悲劇の関連性とは?
近年、旧冥王星宙域において停滞を続けていたタナトスにて、ついに異変が起こり始めている。某月某日、ISDAではタナトスにおける謎の発光現象を観測したという。まるで何かのカウントダウンを告げるかのように、灯っては消えていくタナトスの光。その現象が確認された数時間後、ある宇宙ステーションが音信不通となった。
そのステーションはL3ベースと呼ばれているもので、一般には開放されてはおらず、ISDAがドラゴノーツプロジェクトの一環で運用しているものである。“事故”があった当日には、ドラゴノーツ隊のヴリトラユニットが訓練のために駐屯していたらしい。
ヴリトラユニットという名は、ひょっとしたらあまり見慣れていないかもしれない。ドラゴノーツのパイロットたちはいくつかの小隊に分かれて編成されており、中でも有名なのはライナ・クロムウェルが率いるリンドブルムユニットだ。ヴリトラユニットはリンドブルムユニットに次ぐドラゴノーツの第2部隊で、隊長はハバラギ・イツキが務める。ハバラギ女史はマスコミの前に姿を見せる機会こそあまりないものの、なかなかの美女との噂。ぜひとも、一度ご対面したいものである……。
話が逸れてしまったが、L3ベースに滞在していたハバラギ隊長をはじめとするヴリトラユニット、ほか数名のドラゴノーツ隊員と候補生たちは、現在まったく連絡がとれない状況となっている。彼らの安否について、非常に気にかかるところだ。おそらく、何か大きな事故が起こったものと思われる中で、ISDAからはこの件に関しての発表がまだなされていない。また、タナトスの発光現象との関連性も調査中としている。
タナトスの異変とL3ベースの事故。このような大事件が同日に起こった場合、何らかの関係があると見るのが自然な流れだろう。しかし、もし本当に関係があるとするのなら、ひとつ不可解な点がある。2つの事件のタイムラグが、わずか数時間しかないことだ。つまり、タナトスから飛び立った何者か——おそらくは、ドラゴン——が、たったの数時間で月軌道まで到達したことになる。これはもちろん、我々人類の常識では考えられない話であり、まさに脅威としか言いようがない。ドラゴンの能力に関しては、まだまだ我々に知らされていないことが山ほどあるのだろう。
これまでの記録映像から、ドラゴンを“怪獣”のようなイメージで捉えていたとしたら、それは我々の認識があまりにも甘かったといえるかもしれない。それほどまでに、タナトスの存在は強大かつ不気味である。