vol.09 宇宙戦争勃発!? ジルアード軍がISDAのシャトルを攻撃か?
月面都市での取材を続ける記者のもとに、とんでもない情報が飛び込んできた。月から地球までの航路を行く輸送シャトルが、何者かの襲撃を受けたというのだ。さらに驚くべきことに、シャトル側もなぜか武力を保有していて、自力での迎撃を果たしていたという。これは一体どういうことなのであろうか!?
こちらが独自に入手した目撃情報によると、シャトルから出撃した攻撃機とは、実はドラゴンであったらしい。それも、小笠原で戦闘を繰り広げたドラゴンと同じ姿かたちをしていたとか。すなわち、それは先日の記者会見で存在が明らかにされた、ISDA科学班が開発した地球産ドラゴンそのものである。であれば、一見何の武器を持たない輸送用のシャトルから飛び出したのにも納得はいく。地球産ドラゴンといえば、今やタナトスの脅威から地球を守る要だといってもいい。おそらくは何らかの目的で極秘裏に運搬が行われていたところを襲撃され、自衛のためにやむなく迎撃したといった筋書きだろう。ISDAがドラゴンという力を持ってしまった以上、十分に想定される事態である。今回の件は、それが現実のものになったに過ぎないのだ。
だが、疑問は残る。シャトルを襲ったのは何者なのか? まさか、タナトスから放たれた尖兵なのか? ——いや、そこまで考えるのは飛躍しすぎだろう。
やはりここは、ドラゴンの力を欲する勢力が攻撃を仕掛けたものと考えるのが妥当だ。しかし、まともな宇宙戦力を保有している国や組織はそれ程多くない。というより、今回の戦闘の規模から察すると、ほぼ“あの国”に特定されてしまう。
ジルアード新首長国。
既にお伝えした謎の繊維片にまつわる疑惑や、ガーネット・マクレーン少佐による一連の怪しい行動もあり、この件に関してはジルアードが“クロ”だと断定せざるを得ない。この直前、ガーネットとライナ・クロムウェルの密会があったわけだが、ライナが内通しジルアードにISDAを襲わせる手引きをしたということだろうか? いや、あのライナともあろう男がそんなスパイまがいのことをするとは考えにくい。両者間で行われた交渉が決裂し、その結果として今回のような交戦状態に陥ったとするのが妥当な考えか。
それにしても、タナトスの脅威を前にしながらも、こうして人類同士で争っているというのは何とも嘆かわしい限りである。我々人類が自滅していくのを、遥か旧冥王星の軌道上から、タナトスはゆっくりと見物でもしているのであろうか?
そのような最悪のシナリオにだけは進まないよう、早期の平和的解決を期待したいものである。