vol.06 元ドラゴノーツ隊員の部屋から発見された特殊繊維の謎
先日の記者会見以来、ISDAへの世間からの注目度は特に高くなっている。公式ホームページのアクセス数などは、これまでの何倍もの数字に跳ね上がっているという。さて、ISDA公式ページではドラゴノーツ隊員のインタビュー記事なども掲載されているが、こういった広報資料である時期を境にぱったりと名前が載らなくなった人物がいる。その人物、アマギ・ケイイチ隊員の行方はようとして知れない——。
もともと、アマギ隊員には不穏な噂があった。「地球を守るスペシャルエリートパイロット」であるはずのドラゴノーツ隊に選抜されたわりには、彼自身は抜きん出た技術や能力を持たなかったと言われている。それどころか、いくつかの精神疾患等の病歴があったという(資料では完治したとされている)。ドラゴノーツ隊への選抜基準は明確にされていないとはいえ、彼より優秀な人材は他にも多くいたはず。実に不可解極まる話だ。
そのアマギ隊員が行方不明との情報を手に入れた記者は、彼の住んでいたマンションへの取材を行った。そこは既にもぬけの殻となっていたが、ひとつだけ興味深いものを見つけた。我々が滅多に目にすることのない、非常に珍しい繊維片である。
これを調べてみたところ、ジルアードが特許を持っている強化繊維の一種であることがわかった。この繊維を防弾スーツに使用することにより、ジルアード兵は一見普通の制服でありながら、常に重装備の防弾服を着ているのと同じ状態になるのだそうだ。さらに今回発見されたのは、その特殊繊維の中でも最も高価な種類のもの! これは士官服にしか採用されていないという。
これは一体どういうことなのであろうか!?
ここ数週間で、新小笠原に赴任していたジルアードの高級士官は「ガーネット・マクレーン少佐」だけである。彼女がこの一件での鍵を握っていることは、ほぼ間違いないだろう。
ジルアード軍報によると、ガーネット少佐は任務のため月面都市へ移動したとなっている。ならば記者も追いかけねばということで、現在まさに月都市へ降り立ったところだ。
トリスネッカー・クレーター地下に設営され、環状に走るトラムの形状から「リング」とも呼ばれている月面都市は、長期の人間の滞在に備え、まるで地球上にいるかと錯覚するほど、環境整備が行き届いている。特に重要視されているのが、疑似的な天候の再現。なにしろ雲までかかるのだ!
この人類の新天地での調査取材では、どのような成果を得られるのだろうか? 続報を期待していただきたい。