「はぁーい! こちらアヴニールのカケイ・リョーコでーす!!」
「ちょ、ちょっとリョーコ! 恥ずかしいから、やめなさいって! あ、ISDAオペレーターのクラタ・サキです。今日はよろしくお願いします」
「こんにちは~。ジングウジ・メグミです~」
――オペレーター3人娘の皆さんですね! お久しぶりです。前回のインタビュー以来ですよね?
「そうですね。その節は大変お世話になりました」
――そちらの「アヴニール」は、ISDAがタナトスに対抗して用意した最終防衛設備の中枢船だそうですね?
「はーい、そうなんで~す」
「ISDA全体の方針として、当面の危機である個体ドラゴンの処理に重点を置くと決まったとはいえ、タナトスの脅威は去っていません。監視と、いざというときの防衛システムの構築は怠るわけにいきませんからね」
――本来は1年前に本稼働する予定だったとか?
「はい。ですが、方針転換に伴い大改修を受けることになり、現在やっと最終調整段階に入ったところなんです」
――なるほど。それは大変でしたね。ところで、艦内の設備はどのようなものなのでしょうか?
「それよ、それ! ちょっと聞いてくれる? もう全然、遊ぶところもないし、年柄年中ブリッジに缶詰だし、ホント嫌になっちゃうわー。いい若い娘がこんなことでいいのかしら? ISDAが局員の福利厚生をどう思ってるのか、問い詰めてやりたい気分よ!!」
「まあまあ、リョーコさん、落ち着いて。私は無重力で楽ちんだから快適ですよ~」
「はいはい。あたしが悪かったわよ。どうせあんたほど立派なものは持っていませんよ……」
「気を落とさないで、リョーコ。あなたの気持ち、私には痛いほどよくわかるわ……!」
――あ、あのぉ~……。話がどんどん横道に逸れていってません? ISDAには誰かマトモに話が出来る人はいないんですかー!?
「ふむ……、そういうことなら……この私のインタビューをしてはくれまいか?」
「あ、ちょうかーん!」
――あ! 貴方は、ISDA長官のキリル・ジャジエフさんですね。キリルさんといえば、人類を守る最後の要衝ともいうべき月軌道上の防衛システム、その中枢の担当に栄転! 遅ればせながら、おめでとうございます!!
「君……、それは、皮肉で言っておるろかねぃ……?」
――い、いえ、まったくそのようなことは……。そりゃ確かに、キリルさんの地上勤務時代には度重なる失態や失言があって、だから今日も生放送で正直大丈夫かな? 失言があった時にクレームを処理しなきゃいけないのは俺たちなんだけどな~なんて、決して思っていませんから!!
「この人、さらりとヒドいこと言ってる……。それよりも……、長官! またお酒飲んでるでしょう~!」
「これが飲まないでやっておれるもろか…! 地球のためにと粉骨砕身、寝る間も惜しんで努力してきたこにょわりゃひが、何が悲しゅうてこんなななにもない宇宙空間に1年も飛ばされてらなあ……」
「ほら、長官、無重力だとお酒の回りが早いんですから! 地上と同じように飲んじゃ駄目だって、何度言ったらわかってもらえるんですか?」
「うるひゃーい! ロシアの男がこの程度で酔うわけがなかろぅ! 物心ついたころからウォッカで鍛えられれだなあ……」
「物心ついた頃じゃお酒は飲めませんよ~」
「お酒は二十歳になってから!」
「はいはい。もうどうでもいいですから、早く部屋に戻ってください!」
「らんだとう! わらひにインタビューをさせない気らな!?」
「こうなったら仕方がないわ。リョーコ、長官を画面の外に出して頂戴」
「あいよ。フッ!」
「ごふぅっ!」
――あ、あの、キリル長官? クラタさん? カケイさん? ジングウジさん!? 今、一体何が……!? 蛙が潰れたみたいな声が聞こえましたけど!?
「いえー、何でもありませんのよ? 長官はこの船の管理任務で忙しくて、もう次の作業に移らないといけませんの! おほほほほ……」
――……そ、そうなんですね。いささか腑に落ちないところもありますが、とりあえず了解しておくことにします……。ははは……。本当に、今日はお忙しいところを有難うございました。これからもタナトスの監視と地球防衛の任務、頑張ってください!
「はーい!」
「ま、何だかんだ言っても、あたしたちがいなきゃ始まらないってことだな」
「この1年でISDAはかつての秘密の多い組織から、オープンで皆様に親しまれる宇宙開発事業複合体へと変わりつつあります。これからも地球に住むすべての皆様のために躍進してまいりますので、ぜひ応援をよろしくお願い致します!!」



>>前半へ
TOP >>
<< 戻る